Ribbon Chapel(リボンチャペル)は広島県尾道市「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」内にある結婚式用の教会です。
設計者の中村拓志さん率いるNAP建築設計事務所は、『Dancing trees,Singing birds』や『Optical Glass House』など自然と建築をダイナミックに繋げながら、既存のスタイルに捉われない建築を生み出されています。
NAP建築設計事務所は植物の使い方が面白くてよく見ていますが、設計事務所に園芸部なるものが存在し、事務所の屋上が植物の実験場になっているそうです。恐るべきスタディ力。
そんなNAP建築設計事務所が設計したリボンチャペルに行ってきたので、記録を残します。
造形に圧倒されるRibbon Chapel (リボンチャペル)
リボンチャペルについて
- 所 在 広島県尾道市浦崎町1376
- 竣 工 2013年
- 用 途 礼拝堂
- 延 床 72.2㎡
- 構 造 鉄骨造
- 設 計 NAP建築設計事務所(中村拓志)
- 構造設計 Arup
- 施 工 ピーエス三菱
リボンチャペルは、尾道の中心街からは少し離れた場所にあり、高台にそびえています。尾道駅から車で30分程度の距離です。
少し狭い道を登っていき、ベラビスタに着きましたが、リボンチャペルの存在はほとんどわからなかったです。それほど森の中にひっそりと佇んでいました。
初めてリボンチャペルを見たとき、コンセプトを形に昇華した素晴らしい造形美だなと思っていたのですが、スタディを重ね、コンセプトを肉付けしていき、最終的にこの形態になっていったようです。
平面は単純だが、周囲の緑が外壁・内壁のような役割を担っている。ガラスの反射によって、木の外壁を纏ったかのよう。そして内部は螺旋状かつ垂直方向に求心していく。
反射・透過するガラスによって、室内の空間は外とも中とも言える中間領域が広がっているように見える。
ガラスの収まりが非常に丁寧でした。円形のガラスではなく、多面で構成されているが、離れて見れば存在を無くすガラス。細い円柱の存在感も薄く、自然と垂直方向に視線がいく。
この細い14本の円柱が建物が主たる構造で、全体を支えていると思っていたのだが、そうではなく2つの螺旋階段は相互に支持し合って自立しています。そのため円柱はそれらを補助的に支え、ガラスを支えるのが主な役割。
さりげなく、螺旋同士と円柱を繋げ、安定をはかる。
左右対称な螺旋階段ではなく、片方は立ち上がりが低く、白い手すりが設置されている。
個人的考察ですが、正面のプロポーションを保つために、手すりにしているのかなと思いました。それがあたかもドレスで歩きにくい新婦のために手すりが設置されたように思える。
素材も織り込まれ、細かいディテールへのこだわりがひしひしと伝わってくる。
違う人生が出会い、すれ違い、最後に結ばれる
螺旋階段が結び合いながら頂点で一つになる。この造形だけで美しいですが、象徴的な結婚式場という場所で二人が結ばれるイメージが建築の形態として完成されている。これが本当にすごい。生で見てもプロポーションが本当に美しかった。
緊張感がある美しさというより、滑らかでしっとりとしていて安定感があるような美しさ。
構造を担当したArupと、2つの螺旋階段で自立させるのを突き詰めて、この形態になっていったようです。
螺旋階段から登って行くと、他方の螺旋階段とすれ違います。別の道を歩んでいた人と出会い、すれ違い、一緒になるという結婚までの人生が動線に凝縮されています。比喩として非常にわかりやすい。
螺旋で上がっていくことで、海側・山側といったように周囲の環境や自然を魅せる動線になっています。
瀬戸内海に面する地域は、海と山の眺望が良いのでそれらを見せながら回っていく。海と山を別々に見せて最終的に頂上で巡り合う。
そうした動線が、結婚する二人の巡り会い、瀬戸内海と山の巡り合い、いくつもの意味が重層し、単純だけれどもいくつも絡み合っている。コンセプトと造形が綺麗に溶け合った美しい建築でした。
生で見ても感動のある良い建築で、リボンチャペルで結婚式を挙げられる方が羨ましいです!2つの螺旋階段がかたち作る巡り会い。ロマンチックで素敵な場所でした!
リボンチャペルの見学について
リボンチャペルの見学にあたり、ベラビスタのウェディングの担当者に電話で連絡を入れましたが、非常に丁寧で快く見学を受け入れてくださいました。
ウェディングを検討されている方は、担当者を通すと思うので問題無いですが、実際に式をされていたり、ウェディング予定者のリハをされている場合もありえます。
そのため建築のみを見学される場合は、念のためベラビスタのウェディングに連絡されることをお勧めします。