OPAM大分県立美術館 西日本建築の旅#07

大分県立美術館 OPAMの建築

2015年に開館した大分県立美術館(OPAM)を見に行ってきました。地方にある美術館にどのような魅力があるのか、建築がどのように造られているのかについて書いていきます。

坂茂建築設計による大分県立美術館

大分県立美術館の設計・坂茂氏について

大分県立美術館 エントランス

  • 所 在 大分県大分市寿町2番1号
  • 竣 工 2014年10月
  • 用 途 美術館
  • 延 床 16,817.69㎡
  • 構 造 鉄骨造一部鉄筋コンクリート造
  • 設 計 (株)坂茂建築設計
  • 施 工 鹿島建設・梅林建設 JV

大分県立美術館は、坂茂建築設計によって設計されました。坂さんは「紙の教会」や「ポンピドゥセンターメス」を設計された日本を代表する建築家の一人です。

建築家としての社会的責任について深く考え、災害時の仮設建物や途上国の仮設住宅など、建築家が世界の為にできることを実践してきた人でもあります。2014年にはプリツカー賞も受賞されています。

美術館の空間体験について

大分県立美術館 アトリウム

大分県立美術館 カフェ

開口が大きく、白い内観と相まってスコーンと抜けた吹き抜けが気持ち良くてかなり明るいエントランス。この場所にこの機能があるという従来型のプランでは無く、どこでもイベントや企画が行えるよう非常にフラットで、ヒエラルキーの無い1階部分のように思えました。

従来の美術館にある、入り口近くにチケット受付があり、購入してからじゃないと美術を楽しめないような空間構成とは真っ向から抗おうとする姿勢に見えます。

またガラス開口部と1階展示部分は開閉が可能で、1階全体がワンルームにもなります。本当にガラスも間仕切りも取っ払われることによって、文字通り街に開いた美術館へと変貌する。

大分県立美術館 2階カフェ

大分県立美術館 図書

事実、無料スペースがかなり広くて、気軽に立ち寄れるミュージアムショップがあったり、カフェで休憩できたり、図書コーナーで本を読めたりするところがあって、利用者として気軽に行きやすい場所になっていました。

坂さんお得意の、紙素材による家具や什器が使われています。紙は素朴な素材感ですが、内部との色合いや雰囲気とマッチしていました。

空間の違和感

もう一つ、建物全体を観察してみて、ずっと違和感がありました。1階と2階が空間として繋がっているのに、違う部屋のように感じることです。

大分県立美術館 1階

大分県立美術館 1階 ホワイエ

大分県立美術館 2階

1階は街に開いたアトリウムとして、透明性があり、明るく、広く、誰でも許容できるような開かれた空間で、十分に機能していました。2階は、図書・アトリエ・カフェの機能を補助できるような明るさがコントロールされ、天井高は身体的に親密な高さに。ひとつなぎの空間なのに、明るさと天井高で、ここまでガラッと変わるものかと不思議に思いました。

しかし、2階に行くエスカレーターに乗っていても、1階から2階への移行がスムーズなんですよね。言い換えれば明るい所から暗い所への移行がスムーズなんです。

これも観察していて気付きましたが、天井素材が巧みに使われていました。

大分県立美術館 天井材のグラデーション

開口部付近の天井材には、明るめの木素材が、途中の天井材からは暗めの木素材が使われています。

ここでミソなのが、2階部分から暗めの素材を使うんじゃなくて、1階の途中から使う所だと思います。床・天井・照明などの分け方が複層的になることで、明るさのグラデーションは、より自然なグラデーションに見え、2階部分の繋がりが自然に保たれているように感じました。

建築と木

大分県立美術館と植栽

大分県立美術館 植栽

坂さんの建築の特徴として、木や紙を使うことが多いですが、僕としては、植栽の配置がおもろしかったです。

建築における植栽は、建物をよく見せたり、建物の圧迫感を減らしたり、垂直・水平を際立たせる為に配置されます。大分県立美術館では、その意味もありますが、配置が非常に規則的で、かつ開口部の目の前に配置されていました。

窓の開口部が大きいので外が大きく見通せるのですが、真ん前に木が立っています。外が明るい時に見ると、外の植栽が綺麗に入り込んできて、木が構造じゃないのかと錯覚するように見える。

外部への視線をつなぐのをルーバーが邪魔するかなと思ったけど、そんなこと無くて、むしろフレームが作られ外部への視線が強調されます。

大分県立美術館 竹細工のファサード

大分県立美術館 集成材

建物ファサードの特徴的な木組は、大分特産の竹細工が表現されています。建物に地方的な特徴を入れ込むのは定石ですが、下部の開放性と上部の装飾性が調和していて上品におさまってます。集成材と杉材による、構造と意匠の一体は見事でした。

3階では集成材の構造が近くで見れて、外から見た繊細さとは裏腹に、強靭で太さのあるゴリゴリの集成材が観察できます。

大分県立美術館の見所は3階

大分県立美術館 3階

大分県立美術館のハイライトはやはり3階部分のホールでしょう。うねった集成材が3方向に重なりながら、天井を構成しています。高い天井もさることながら、うねる天井は不思議な感覚で、視線が天窓の方に自然と向かってしまう。

大分県立美術館 3階 ドラマチックな光

時間の変化によって、光の入り方が変わるので明るい空間になればドラマチックな光が入り込んでくる時もあります。天窓の下には彫刻があったりして、ずっと佇んでいられるような素晴らしい空間体験ができる場所でした。

大分県立美術館の企画展示

大分県立美術館は建築も良いですが、企画展示も素晴らしかったです。

須藤玲子さんの「こいのぼり」やミヤケマイさんのインスタレーション作品など、単にお客として作品を見るだけではなくて、作品を五感で感じたり、触ったりすることで作品と関わるようなものが多く、キュレーションの振り幅が広くて感心しました。

まず東京でしかやってないような企画が、大分でやっているのが驚きでした。

館長に武蔵野美術大学の新見隆さんが就かれたのも大きいと思いますが、企画のバランスが良くて色々な企画が見れるのは、地方の美術館として素晴らしいと思います。

箱物だけでなく、中身もしっかり伴った素晴らしい美術館でした。また違う企画の時に行きたい!

大分県に行かれたら、温泉だけでなく、大分県立美術館もおすすめです。