住宅をリフォームしたときに固定資産税は高くなるのか?

住宅をリフォーム・リノベーションしたときの固定資産税

住宅をリフォームやリノベーションしたときに、固定資産税は高くなるのか?

住宅をリフォーム・リノベーションした時に、固定資産税はどうなるのかについて、元税務課職員がまとめました。

古い住宅をリフォームして綺麗にするか、いっそ建て替えて新築するか悩みどころだと思います。
住宅を改修した方が、固定資産税は安く抑えられます!

家をリフォーム・リノベーションしたときに、固定資産税は高くなるのか?

1-1 住宅をリフォームしても固定資産税は変わらない

結論から言うと、古い住宅をリフォームしても、固定資産税は変わりません。

今まで払っていた固定資産税と同じ額、もしくは経年によって下がった額を払い続けることになります。

全国にあるほぼすべての市町村が、リフォームした住宅の再評価を行っていません。

もちろんリフォームの内容にもよりますが、一般的な建物の内装を取り替える修繕やエアコン・給湯器設備等の交換程度なら、まず固定資産税は高くなりません。

ただし評価の対象となる場合もあります!

評価上の言葉でいうと、「資本的支出を伴う」大規模改修などは再評価されることがあります。

簡単にいうと、リフォームやリノベーションによって、住宅の価値が明らかに上がったと認められるようなときです。

あとで詳しく解説しますが、構造躯体を残したままで、内装や設備を総取り替えし、見違えるほど建物を変えた場合、再評価を行なっている市町村もあります。
固定資産税の再評価を行なった場合、ほぼ確実に固定資産税が高くなります。

1-2 リフォームとリノベーションについて

この記事で書いているリフォームとリノベーションについて整理しておきます。

リフォーム
リフォームは、傷んだ内壁や天井を修復したり、トイレ・キッチン・お風呂の入れ換えなど、住宅の修繕や修復を目的としたものです。
あくまで傷んだ住宅を以前の状態に戻すといった意味合いが強いです。
リノベーション
一方、リノベーションは、建物の構造躯体となる基礎・柱・梁は残しつつも、内装や外装を大規模に変更し、トイレ・お風呂・キッチンなどの建築設備も総入れ換えするようなものを差します。
天井・床を抜いたり、逆に増やしたりして床面積が変わることも多いです。

リフォーム」で、固定資産税の評価額が上がることは、まず無いです。

しかし市町村によっては、「リノベーション」をした住宅・建物の再評価を行っているところがあります。
そうはいっても、多くの市町村は、リフォーム・リノベーションを再評価していないのが現状です。

1-3 なぜ住宅のリフォームやリノベーションをしても固定資産税が高くならないのか

どうしてリフォーム・リノベーションをしても、固定資産税が高くならないのか。

固定資産税が変わらないということは、市町村の職員が固定資産税の再評価を行っていないからです。

再評価を行わなければ、固定資産の評価額は変わらず、改修以前までの住宅の評価額が反映されたままになります。

つまり、リフォームして家は新しくなったけど、住宅の固定資産税は安いままかかり続けるのです。

市町村の資産税担当課が、改修した建物の再評価を行っていない理由はいくつかあります。

  • 改修している住宅の把握が難しい
  • 改修した建物の評価が難しい
  • 他の市町村との足並み

木造住宅は、リフォームやリノベーションなどの改修・修繕を行う場合、確認申請の許可・届出が必要ありません。
(※木造2階建以下・200㎡以下の場合は大規模修繕・模様替えの確認申請が不要)

外壁の塗り直しや屋根の葺き替えに建築許可は不要です。住宅の中のトイレやキッチンの交換なども同様です。
古い木造住宅でリフォームやリノベーションするときには、建築許可が要らないことがほとんどで、市町村側としても、リフォーム中の住宅や建物を見つけるのは、難しいのです。

もし何かのきっかけで住宅の大規模改修を見つけたから再評価しますといっても、大規模改修を発見できる・できないところがあり、税額に大きな差がついてしまいます。納税する側から見てもかなり不公平に感じます。

改修・修繕した建物の再評価方法は定められているのですが、改修・修繕は固定資産の評価そのものが難しいです。

古いものと新しいものが混在しており、どの部分をどう評価するか。
その建物の本来の評価とどう整合性をとるかなど、評価員をやっていた時のことを思い返してもなかなか大変でした。
評価に際して建物の専門知識が求められますが、数年ごとに部署異動する職員にとっては、難しいものがあります。

そもそも、古い建物は何度も修繕していたり、床面積もいつの間にか変わっている事が往往にしてあります。
改修・修繕した建物を、時間をかけてまで再評価する余裕が無いのが本音です。

また固定資産評価の裁量は、ある程度市町村に委ねられていますが、そうはいっても、市町村同士足並みを揃えています。
他市町村の多くが取り組んでいない現状では、多くの自治体が積極的にリフォーム・リノベーションの再評価をしていませんでした。

こうした理由から市町村は、リフォーム・リノベーションした住宅や建物を積極的には再評価していません。

1-4 リフォーム・リノベーションによって固定資産税が高くなる場合

リフォーム・リノベーションは、固定資産税が変わらないことが多いと書いてきましたが高くなる場合もあります。

  • 用途変更を伴う場合
  • 床面積が変わる場合
  • 市町村の評価体制による

用途変更を伴うとは、お店を住宅に変えるといったように、建物の用途を変えてしまうことです。
近年、盛んなのが、古い蔵や倉庫を住宅や店舗にリノベーション(コンバージョン)するといった事例です。
この場合、建物の評価上の計算が変わるため、現地調査して再評価を行うことがあります。

用途変更は、建築確認が必要なので、行政側としても建物の状態が変更されることを知れるわけです。
そうした理由から、用途変更を伴うリフォーム・リノベーションをした建物を再評価している市町村がありました。

しかし用途変更を伴うリノベーションをした建物でも、用途変更の計算のみ処理し、再評価そのものは行わないという市町村がほとんどです。
再評価を行わなければ、固定資産税の額は変わりません。

床面積が変わるのは、天井・床をぶち抜いたり、逆に増やしたりすることもあるリノベーションに多いです。
床面積が減る時は、減築といったりしますが、この場合は必ず評価額を変更します。
そのため職員が現地へ見に行くことが多く、資本的支出を伴うような修繕・改修が行われていれば同時に再評価して固定資産税が高くなることがあります。

しかしながらこの場合も、床面積の増減を評価額に反映させるだけで、修繕・改修された部分を再評価している市町村はかなり少ないです。
あくまで、床面積の増減のみを固定資産の評価に反映させているだけの市町村が多いです。

これを言っちゃおしまいですが、改修した建物を評価するかどうかは市町村によって変わります!

法律によって固定資産税が決まっているのに、市町村によって違いがあっていいのと思われるかもしれませんが、改修した建物を再評価するかどうかの基準は市町村によって変わります。

大規模改修を見つけ次第、評価するっていうところはあまり聞いたことないですが、市町村ごとに改修を評価するかどうかの基準を内規などで定めていることが多いです。
そのためA市町村なら再評価して固定資産税が上がらないのに、B市町村でリフォーム・リノベーションした住宅は固定資産税が上がるという事例はありえます。

改修によって固定資産税が高くなるか気になる場合は、建物のある市町村の資産税課に聞いてみましょう。
物件の場所を言う必要もないし、改修した建物の再評価をしているかどうかなら教えてくれるはずです。

1-5 新築するよりリフォームするほうが固定資産税は安く抑えられる

リフォーム・リノベーションすることで、固定資産税が高くなるかについて書いてきました。
住宅をリフォーム・リノベーションすることによって、固定資産税が高くなることは少ないのです。

そう考えると、古い住宅を新しく建て替えるよりは、住宅をリフォーム・リノベーションをした方が、確実に固定資産税は安く抑えられます。

しかしながら、新築の方がローンを利用しやすかったり、税金上の優遇が多いのも事実です。
がっつりリノベーションすれば、かかる費用が新築とほぼ変わらないということもありえます。

悩みどころですが、固定資産税だけを考えるなら、新築するより古い建物をリフォーム・リノベーションした方が安く抑えられるのです。

まとめ

いろいろと書いてきましたが、簡単にまとめます。

  • 住宅をリフォームしても、固定資産税が高くなることはまず無い。
  • 建物の躯体だけを残して、大規模に改修する場合には再評価する市町村がある。
  • 床面積が変わる場合は、増築・減築によって必ず固定資産税は増減する。
  • 市町村によって再評価する基準は異なる。

改修した建物を、市町村が再評価した場合は、固定資産税が高くなることは間違いないです。
それでも同規模の新築した建物よりは、固定資産税が安い。(建物の躯体が古いことを考慮した評価を行うため)

以上書いてきましたが、リフォームした建物の固定資産税が高くなることはまずないです。
住宅をリノベーション(コンバージョン)した場合、市町村によっては再評価を行い、固定資産税が高くなることがあります。とはいえ、多くの自治体は、リノベーションも再評価していないのが現状。

気になる場合は、建物の所在する市町村の資産税課(東京都特別区は東京都主税局)に、改修した建物を再評価しているか聞いてみるのが確実です。