元税務課職員が解説、固定資産税を安くする方法【節税対策】

固定資産税を安くおさえる方法 元税務課職員が解説

この記事は、固定資産税を安く抑えるには、どのような方法があるのかについて書いています。

新築住宅をこれから建てようとしている人や、固定資産税が高すぎるのでもう少し安くならないのかというような人に向けての記事です。

僕自身、市役所の税務課職員として固定資産税の賦課業務を4年間やってきました。業務をやっている側からみて、安くできる方法について、詳しく解説しています。

元税務課職員が解説、固定資産税を安くする方法について

正攻法で固定資産税を安くする方法は無い。

残念ながら固定資産税は、税金なので特殊な事情がなければ安くなりません。

当たり前ですが、土地・建物を所有していれば否応無く固定資産税を支払う必要があります。
さらに土地・建物を所有していることに対してかかる税金なので、所有者が会社をクビになったり、病で入院したからといって、安くはなりません。(※納税相談で支払いを遅らせたり、分割にすることはできます。)

固定資産税の計算方法は複雑で、新築時や建て替え時に「固定資産税」とはなんぞやと思ったきり、それから深く考えずに税金を払い続けている人も多いんではないでしょうか。

固定資産税は、条件次第で安く抑えられる場合があります。

固定資産税の減免(減額)の対象者

事情によって、固定資産税が減免(減額)されることがあります。

どこの市町村でも共通しているのは、災害による減免生活保護受給者の減免の2つです。

まず災害による減免ですが、地震や大雨、火事によって建物に被害があったときに、被害の程度によってその年の固定資産税が減免されます。

例えば被害の割合が30%なら、その年の残りの固定資産税から30%を減免する、というようなことがあります。
市町村によって減免の割合が変わることがあります。

固定資産税がかからなくなる例として、生活保護者には固定資産税が課税されません。
基本的には、本人が住んでいる土地建物が対象です。
財産になるような不動産を持っていれば、生活保護はまず受けられません。

  • 災害による減免
  • 生活保護受給開始による減免

この2つが、事情によって固定資産税が直接下がる、もしくはかからない方法です。

建物の固定資産税は、経過年数によって自動的に下がる

建物は経年劣化によって、建物の価値が下がっていくと考えられ、経過年数によって評価額が下がります。

しかし経過年数が反映されて税額が下がるのは、評価替えが行われたときです。

固定資産税には評価替えという制度があり、評価替えによって、固定資産の評価額見直しがなされています。
評価替えは、3年に一度行われます。
本来なら毎年行うべきものですが、事務量・計算量が膨大過ぎるため、3年に一度見直しているのが現行の制度です。
この評価替えによって、建物は経過年数に応じた減額が行われます。

ちなみに評価替えではない年は、建物の状況が変わらなければ前年と同額になります。

木造住宅なら25年から35年、軽量鉄骨住宅なら30年経過すると、底値になり、そこからは減額されません。
建物の構造や用途によって、経過年数の下げ率と上限が決まっているのです。
住宅の固定資産税が3年毎に下がらなくなった場合は、新築から25〜30年を経過したか確認してみてください。

より丈夫で、長持ちする建物ほど、経過年数の下げ率が小さく、底値になるまで長い年数がかかります。
例えば、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合は、底値になるまで60年かかります。

土地に関しては、時点修正という形で、毎年見直され、評価額に反映されています。
地価が上昇・下落しているので、それに合わせて少しずつ上昇・下落するといった感じです。
土地は、地価の急な上昇や下落に追随しないように措置がとられているので、地価が急に安くなったからといってすぐに大きな変動はありません。

以上をまとめると、

  • 建物の税額は3年毎の評価替えによって勝手に下がる
  • 新築してから、木造なら25年程度・軽量鉄骨造なら30年程度まで、税額は下がり続ける
  • 丈夫な構造の建物ほど耐用年数は長いので、下がりにくく底値まで年数がかかる
  • 土地は地価を反映しつつ毎年緩やかに変化する

つまり、何もしなくても、固定資産税は一定の額までは建物の経過年数に応じて、3年毎に下がり続けます。
今、固定資産税が高いと思っていても、評価替えの年度には少しずつ税額が下がっていきます。

固定資産税がかかりはじめてから3年周期ではなく、評価替えの時期は一律で決まってます。
直近の評価替えは2018年(平成30年)に行われました。
なので次の評価替えは2021年(令和3年)になります。

固定資産税を安く抑える方法

前置きが長くなりました。
ここから、固定資産税を出来るだけ安く抑える方法を紹介します。

固定資産税の特例をフル活用して安く抑える

固定資産税には、たくさんの特例があります。
この特例を出来るだけ当てはめていくことが固定資産税を安く抑える一番の方法です。

  • 住宅用地の特例
  • 新築住宅の新築軽減
  • 長期優良住宅の新築軽減延長
  • 市区町村独自の特例

これらが適用しやすい、主な特例です。

住宅用地の特例について

住宅用地の特例は、固定資産税の中でも、最も有名かつ減額が大きいので、多くの方もご存知かと思います。

住宅用地は、住宅がある敷地に関して、住宅用地の特例が適用され、土地の税額が大きく下がる制度です。

噛み砕いて書くと、住宅1戸につき、敷地200m以下について評価額×6分の1になります。
200㎡を超える部分については、3分の1になります。(都市計画税は、200㎡以下3分の1、200㎡超3分の2→都市計画税についての詳しい説明はややこしくなるので以下省きます。)
かなり大きい減額ですよね。

住宅用地の特例がすごいのは、住宅が取り壊されるか、もしくは違う建物の用途を変更しない限り、特例が効き続けます。
つまり敷地が住宅のために供している限り、特例が効き続けます。

余談ですが、土地の上に、住宅が建っている限り住宅用地は効きますが、誰も住んでいない空き家の場合でも住宅用地の特例は効き続けます。要は用途上、住宅となっている建物があればいいのです。
この制度によって、空き家となった住宅がボロボロになっていても取り壊さずに放置している人が多いのが実情です。こうした問題に取り組むため、数年前から空き家対策が推進され始め、近隣住民に被害を与えるような空き家に関しては、住宅用地の特例の適用外にしたり、取り壊し勧告などの処置を行政側から行えるようになりました。

土地に関しては住宅用地として運用することが、安く抑えるための一番の方法です。

土地が余っていて、空き地のまま置いていたり、貸し駐車場として運用するよりは、集合住宅を建てた方が固定資産税は必ず安くなります。
アパート経営をおしかける営業マンは、これを1つのセールストークにしてるのではないかと勝手に予想してます。

また住宅用地は1戸につき、200㎡以下は6分の1になります。
2戸になれば、400㎡以下が6分の1になるというように、戸数が増えるほど6分の1になる対象面積は増えていきます。
なので、200㎡を超える土地に2世帯で住む場合には、2世帯住宅とした方が住宅用地の特例は2戸認定され、400㎡までは1/6の額になります。

固定資産の評価業務で、住宅1戸とみなす基準は、玄関(出入り口)・キッチン・トイレ・居室を備えているかです。(お風呂は無くても住宅とみなします。銭湯文化の名残?)
建物がひっついていても2戸とみなすには、しっかりしたドアで世帯ごとの空間が仕切られていて独立した別の玄関が必要になります。
同じ玄関を共有している場合には、1戸とみなします。
基本的には、玄関・キッチン・トイレ・居室がセットで1戸です。

住宅の戸数の話は、新築軽減の時にも影響します。

住宅用地のまとめ

  • 土地の固定資産税を安くするには最良は住宅用地の特例
  • 1戸ごとに200㎡以下1/6・200㎡超1/3の減額
  • 住宅の戸数×200㎡以下が1/6の減額→例)同一敷地に住宅2戸-400㎡までが税額1/6

住宅の敷地なのに、土地の固定資産税が高いなと思う場合は、もしかしたら住宅用地の特例が漏れているかもしれません。

まず納税通知書をみて、住宅の敷地となっている土地の評価額と課税標準額を比べてみてください。
評価額×0.7が課税標準額となっている場合は、住宅用地の特例が効いていません。
もちろん、住宅の敷地とみなせないような場合は適用されませんが、明らかに住宅があるという場合は、住宅用地の適用漏れの可能性があります。

全国でも、住宅用地の特例の適用漏れが大量に発覚し、ものすごい額の還付がなされています。
近隣市や僕が働いていた役所において、税金の還付で圧倒的に多かったのは、この住宅用地の適用漏れです。

住宅用地の適用漏れの場合、住宅が建っていた時から還付になるので、数十年の場合もあり、その時は100万円を超えるような場合もあります。還付金は、支払う必要の無かった税金+延滞金になるので、結構な額になります。

もし住宅のある敷地の課税標準額が、評価額×0.7の時は、役所の税務課に住宅用地の特例が効いているか確認してみてください。

住宅の新築軽減について

新築軽減は、住宅を新築した時に、建物の120㎡部分まで固定資産税が3年間2分の1になるという制度です。

新築軽減が適用されるのは、50~280㎡以内の住宅です。49㎡以下や280㎡を超える住宅は新築軽減が適用されません。
そのため、新築住宅を建てる場合は、特別な理由が無ければこの面積以内に収めておけば、新築軽減を受けることができます。

280㎡超の住宅を建てる人は税額のことを気にされないと思いますが、小さな住宅を考えている場合、50㎡以上の住宅を考えた方が税額上お得です。

新築軽減は、戸数によって軽減面積が増えます。先ほどの2世帯住宅で2戸の住宅と認められた場合には、120㎡×2の240㎡までが新築軽減の対象となり、240㎡まで固定資産税が3年間半額になります。

新しく住宅を建てるときには、この新築軽減の範囲50㎡〜280㎡(貸家は1戸40~280㎡)に収まるようにすることが安くする簡単な方法です。
また離れを建てるような場合でも、この面積に収まっていて、住宅の要件(玄関・キッチン・トイレ・居室)を満たしているなら新築住宅の扱いになります

新築軽減のまとめ

  • 新築住宅は3年間固定資産税が半額になる新築軽減
  • 新築軽減の要件は50~280㎡の面積に収める
  • 戸数分新築軽減は適用される→例)2世帯住宅なら240㎡まで半額になる

長期優良住宅について

長期優良住宅は、都道府県から認可を得た認定長期優良住宅のことです。
まず長期優良住宅にすることによって、新築軽減は2年延長され、5年間2分の1となります。(3階建て以上の中高層耐火住宅の場合は7年間)
長期優良住宅は、他にも住宅ローンの控除額・不動産取得税の控除額・登録免許税の減額などにも影響します。
一般的な住宅であれば、固定資産税の新築軽減の2年延長で、10万程度は浮きます。
住宅ローン控除と不動産取得税は、長期優良の優遇措置の対象とならない場合も多いです。

長期優良住宅は、申請と手数料に数万〜数十万程度かかる場合が多く、ハウスメーカーや工務店次第で手数料が変わることが多いです。ハウスメーカーによっては、はじめから認定長期優良住宅の認可を取得するところもあります。

数万で済むなら、長期優良住宅の認定をとった方が、固定資産税の新築軽減額の方が大きいので、トータルでは安く抑えることができます。

長期優良住宅をまとめると

  • 新築計画時に長期優良住宅の認可を都道府県から受けた住宅
  • 長期優良の場合、新築軽減の適用が2年延長
  • 新築軽減以外でも住宅ローン控除・不動産取得税・登録免許税などにも優遇制度がある

長期優良住宅は、申請費用が高いので認可を受けるかどうか悩ましいです。
一般的な住宅(木造120㎡)であれば、長期優良によって10万円程度は浮きます。(新築軽減2年延長)
10万以内ぐらいで手数料が収まるなら申請した方がトータルでみた時には安くおさまると思います。

個人的意見ですが、長期優良住宅は、認可をとれるならとった方がいいです。
まず固定資産税の減額分で、申請費用分程度は賄えると思います。
あまり考えたくないですが、事情により住宅を手放すことを考えた時にも、購入する側にとっては住宅の品質を多少保証するものになり得ます。

市区町村独自の特例について

これは市区町村によって異なりますが、市区町村で独自に、固定資産税の軽減を行なっている場合があります。

耐震改修を行なったことで翌年の固定資産税が一定額下がったり、リフォームに合わせてバリアフリー化したことで固定資産税が少し下がるといった事例があります。

他にも、地方の市町村によっては、定住対策として、市外からの転入者で新築した人には数年間の固定資産税分を給付するというような自治体もあります。
これらの軽減は、実際に市区町村の情報を見てみないとわからないものなので、実際に家を建てる時やリフォーム時に、市町村のホームページを確認したりハウスメーカーや設計担当者に問い合わせてみましょう。
土地にこだわりが無ければ隣の市の税情報などを見てみてもいいかもしれません。

公共の土地にすれば固定資産税はかからない

少し裏技的なものですが、全く使っていない土地は公共・公益性の高い土地にしてしまう方法があります。

固定資産税には、税がかからない非課税の制度があります。
例えば、国や市町村が所有している土地・建物に対しては課税されません。(非課税)

同様に、地域のコミュニティセンター、公民館や公園などに供している建物・土地などの公共性の高いものに対しては課税されません。
これらの土地・建物の所有者は必ずしも公共団体ではなく、個人名義のこともあります。

土地をわざわざ公園などにしなければならないかというと、そうでもなく、空き地であれば、誰でも無料で使える駐車場や広場にしていれば非課税のようになります。
非課税に類似した制度ですが、地方税法第6条・第367条にある課税免除・減免という制度で、市区町村の条例で定められていることが多いです。

例えば、コミュニティセンターの近くに空き地を持っていて、無料駐車場として提供したり、もしくは公園のような場所として市区町村に申請すれば課税免除(or減免)となり、所有している土地の固定資産税をかからなくすることができます。
その土地を誰かに譲渡するわけでは無いので、また個人の土地として戻すこともできます。

しかし、市町村や自治会と協議しなければならないことがほとんどなので、誰にでもおすすめできる方法ではありません。

市街化調整区域なら農地にすると断然安い

市街化調整区域に土地がある場合、現況地目が農地だと、とんでもなく固定資産税が安くなります。

市街化調整区域とは、都市計画法によって定められた地域で、農業・林業・漁業などを守るために土地・建物の開発に大きな制限がかかった地域です。
持っている土地が市街化調整区域がどうか確認するには、都市計画税がかかっているかどうかでわかります。
調整区域の場合は都市計画税がかかりません。納税通知書に都市計画税について記載されています。

調整区域の農地を守るためにも農地は、固定資産税が非常に安いです。
ケースバイケースなので、額の例示がしにくいのですが、用途が宅地や雑種地の土地と比べて農地は1/100なんてことあります。

調整区域にあって、全く利用していない土地は農地にして、農家に貸し出したり自分で耕作すれば固定資産税としてはめちゃくちゃ安く抑えることができます。

しかしながら、他の地目から簡単に農地にできるわけではなく、土地を農地にする時間・手間・費用と農業委員会or知事の許可が必要だったりします。

以上も人を選ぶ方法なので、誰にでもおすすめできる方法ではありません。調整区域で転ばしている土地がある人で農業に興味がある人にはおすすめです。

ちなみに市街化区域の土地は、農地にしても宅地並み課税となります。
正確には農地に準じた税額となることが多く、宅地や雑種地(空き地や駐車場など)から比べると安くなりますが、わざわざ農地にするほど安くはなりません。

物置・車庫は固定資産税のかからない工作物にする

これは僕が窓口などでもよく相談を受けた例ですが、結構基準が曖昧だったり市町村によっても基準が変わることがあるので難しい問題ですが、一応書いておきます。

建物を建てれば固定資産税の課税対象となりますが、逆に課税対象とならない建物(工作物)の話です。
ここでは簡単に物置・車庫などについて書いておきます。

固定資産税のかからない物置・車庫は、土地に固定されていないor半屋外のような工作物です。

ホームセンターにも売っているようなヨドコウなどの物置を例にあげます。
ヨドコウなどの物置でも、課税の対象となる場合とならない場合があります。

この基準は、物置に基礎があって土地と固定されているかどうかが、大きな判断基準でした。
基礎がなくても、アンカーボルトで明らかに固定されているような場合は課税対象です。

課税対象とならないのは、物置をただ置いているような場合です。この場合は課税の対象となりません。

車庫に関しては、四方向が壁・建具で囲まれているようなものは課税対象で、カーポートのような屋根だけのものであれば課税の対象になりません。

固定資産税の対象となる建物の要件は以下の3つです。

  • 定着性
  • 外気分断性
  • 用途性

これを元に建物かどうかを判断しているので、土地に定着し(基礎がある)、雨風を防げる(屋根・壁がある)、何らかの利用用途がある建物は固定資産税の対象となります。

逆に言うと置いているだけの物置やコンテナ、屋根だけのカーポートは建物とは見なさないので、課税の対象とはなりません。

まとめると

  • 土地に定着していない小屋や物置は課税対象とならない
  • カーポートのような屋根だけの構築物は課税対象とならない

まとめ

固定資産税を安く抑える方法について書いてきました。
構成も考えずにダーっと書いてきたので、後日推敲してもう少し読みやすくまとめようと思います。

固定資産税を安く抑える方法について書いてきましたが、この他にも方法はたくさんあると思います。
基本的には、法律・条例に則って特例や減額があるので、国・市の思惑にのった方が安くなることが多いです。
例えば、誰でも住宅を保有できるように、住宅のための土地や建物には税制上の優遇措置が圧倒的に多いです。一般的な住宅であれば、住宅に関する多くの優遇を受けられるはずです。

軽減措置を適用するためには、煩雑でわかりにくかったりしますが、市町村のHPや窓口で情報を確認したり、ハウスメーカーの営業担当に詳しく確認してもらうのが有効だと思います。
2019年10月から、消費税増税も控えているので、それを踏まえた軽減措置が出てくるかもしれません。(8%増税時には、住宅助成金の制度がありました)

税金の特例や軽減を知っているだけで、余計な費用をかなり抑えられるので、面倒でもいちいち調べましょう!
また法律はコロコロ変わったりするので、住宅の購入を考えるときには、新しい情報を仕入れるのも重要です。