COMICO ART MUSEUM YUFUIN 西日本建築の旅#08

COMICO ART MUSEUM YUFUINの建築

大分県の由布院にある「COMICO ART MUSEUM」に行ってきました。

建築の魅力や贅沢なアート体験について書いていきます。

地方の美術館で展示作品が少ないにもかからわず、観覧料が強気な価格設定です。

しかし、価格以上に素晴らしい美術館でした!

COMICO ART MUSEUM YUFUINの建築とアートについて

COMICO ART MUSEUMの建築について

  • 所在 大分県由布市湯布院町川上2995-1
  • 竣工 2017年9月
  • 用途 美術館
  • 延床 602.97㎡
  • 構造 鉄骨造
  • 設計 隈研吾建築都市設計事務所

日本で、最も有名といっていいかもしれない隈研吾建築都市設計が建築設計を行っています。

隈研吾建築都市設計事務所の建物は、ここ10年でものすごい数が竣工したんじゃないでしょうか。

どれをみても、ひとつひとつクオリティが高いのはさすがです。

COMICOのロゴデザインは、原研哉さんが手がけられています。こちらも巨匠中の巨匠。

サインやしつらえがいちいちカッコ良かったです。

建築は、外壁に焼杉を用いられていて質素な外観です。質素ながらめちゃくちゃエッジが効いている。そんな建築でした。

焼板の組み方に特徴があって、単純な規則性がなく、バラバラに組まれていました。

そもそも焼杉の表面自体に凹凸があって、奥行きがあるように感じられます。

その上、焼杉が規則なく組み合わされることで、外観に立体感が生まれている。

遠くから建物を見たときは、かなり質素で、落ち着いた建築に感じましたが、近くでみるとその素材感や立体感におどろきました。

隈さんの特徴として、こうした小さい要素を徹底的にスタディして、それを拡張していくような方法が多いように思います。

単純な操作に見えますが、この微妙な間隔や素材感を相当スタディして導きだされたんじゃないかと想像しました。

由布院の街に溶け込むCOMICO ART MUSEUM

法規上の制限かもしれませんが、周囲の建物とのスケールも壊さず、由布院の街にフィットするように設計されているように感じました。

切り妻屋根の建物が、ぽつんぽつんと佇んでいるような、街の風景そのものが美術館に反映されています。

東京南青山にある根津美術館と同様の動線ですが、COMICOはより住宅的なスケールでした。

軒下空間と緑の配置で、外の天気や植栽の変化をありありと感じさせるような構成で歩くのも楽しかった。

分棟の建物は、会社の事務所なんですが、植栽が目線を隠す役割もあって、屋根、植栽ともに丁寧な設計がなされていました。

枯山水の石庭を2階に持ってきちゃうあたりは攻めてるなあと思いましたが、2階の高さを抑え、山々を仰ぎ見るような視線を作りだしているのに感心しました。

この石庭めちゃくちゃ重いらしくて、構造が大変だったみたいです。

作品鑑賞後は、ラウンジでゆっくりお茶をいただきました。

ラウンジは、土や紙などの素朴な素材で構成されていて、照明の色もあって、ゆったりリラックスできるところでした。

ラウンジには、ギャラリーや外観のような張り詰めた緊張感は無く、緊張と弛緩が、動線の中に上手く組み込まれていました。

COMICO ART MUSEUMのアート体験

COMICO ART MUSEUMは予約制の美術館です。入る場合は事前予約が必要なので注意しましょう!

COMICO ART MUSEUMのサイトで簡単に予約ができます。

 

なぜ予約制かというと、「キュレーターが解説しながら作品を見れる」、ツアー形式の美術館だからです。

東京や京都の美術館に行くと、もの凄い量の人でゆっくり作品と向き合うこともできません。

少ない人数で、キュレーターと話しながら作品に向き合えるので、個人的にはめっちゃ良かったです。

ツアー形式と言っても、ずっとテンプレートの解説を聞かされるようなものではなく、作品について質問すれば丁寧に解説してくれて、じっと見てるときはほっといてくれるような、空気を読んでくれるキュレーターさんでした。

例えるなら、めちゃくちゃ美術の詳しい友人と美術館にいっているような、そんな感じです。

 

村上隆氏の美術の方法論や、どういう文脈で作品を作ろうとしているのかの話も聞けて作品の理解が進みました。

芸術作品の楽しみ方は人それぞれですが、キュレーターに直接説明してもらえるのは、作品を楽しむきっかけになります。

建築も楽しみだったんですが、杉本博司さんの『海景』を見るのが楽しみでもありました。

海景シリーズは杉本さんの代表作でもありますが、生で見たことがなくて、どうしても見たかったので、見れたときは本当に嬉しかった。

言ってしまえば海の白黒写真なんですが、海の表情や水蒸気、霧、雲、空、すべてがありありとその場に映し出されているように見えてきて、深淵な風景を覗き込んでいるような不思議な感覚になります。

 

またCOMICO ART MUSEUMは、作品や美術館コンセプトについて書かれた上記写真のような図録がもらえます。

キュレーターの解説と図録がついて、観覧料1500円は安い!

由布院の街に合う、贅沢なアート体験ができる良い美術館でした。

 

注意

美術館には予約が必要なので、行かれる際は注意してください!