2018年2月、山口県周南市にオープンした周南市立徳山駅前図書館に西日本の建築を巡る旅として行ってきました。
周南市徳山駅前図書館は武雄市図書館などと同じく、指定管理者がCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)です。
蔦屋書店・スターバックス・図書館という機能を持った施設です。図書館の施設内でカフェの飲み物を持って閲覧することができます。
「とらや」や「安曇野ちひろ美術館」を手掛けられた巨匠と言ってもいい、内藤廣さんの事務所が設計されたため見に行ってきました。
周南市徳山駅前賑わい交流施設の建築を見る!
周南市立徳山駅前図書館 設計は内藤廣建築設計事務所
- 所 在 山口県周南市御幸通二丁目28
- 竣 工 2017年
- 用 途 複合施設(図書館・カフェ・交番・市民活動支援センター等)
- 延 床 5,256㎡
- 構 造 鉄骨造
- 設 計 内藤廣建築設計事務所
- 施 工 広成建設・洋林建設
賑わい交流施設ということで、駅から図書館に向かう動線上にかなり大きい半屋外テラスの広場があります。この空間が木材の露出も相まって気持ちが良い。
テラス側に向かう床の目地と図書館に向かう天井の目地がぶつかり合う。
迫り出したテラスが街並みを一望させる役割とテラスに人がいるという賑わいを外部にみせる役割を担っている。そうしたふるまいがデザインされているように感じた。
ここの建築はこのテラスが全てといってもいいと思います。気持ちの良いテラスが、人を誘い込む装置になる。
またテラスの外部空間が緩衝地帯として機能し、図書館内部に柔らかい光を取り込む。
しかし訪れた日が大雨で、残念なことにテラスに出ている人は全くおらず、テラスを存分に感じることはできませんでした。
各階にテラスがあり、外部から見れば3層それぞれにテラスがある。ありそうで無い建築。
屋根に少し勾配がついてて、外に向かって開いている。そのため外側から見ると木の天井がよく見える。こういう細かい気遣いはさすがです。
工事現場の囲いが目障りだが、それが終われば街を見渡せる良い場所になりそう。
テラス広場はサッカーのパブリックビューイングとしても活躍!
訪れた日がちょうどサッカーW杯の日本対コロンビア戦の日で、サッカーのパブリックビューイングが行われる予定でした。
図書館前のテラスには大きなモニターがあり広いスペースもあるので、スポーツのパブリックビューイングにはちょうど良さそうでした。23時までイベントが開かれるのがすごい!指定管理者ということで、民間がやっているわけですが、自治体だけだとなかなか実行できない。
CCCの指定管理に関して議論があるみたいですが、イベントの融通が効くのは、良い所の一つではないかと思います。
図書館やテラス広場でちょこちょこイベントが行われているみたいで、人を呼び込もうとするソフト面での取り組みがひしひしと感じられました。
サッカー見たい気持ちをグッッと堪えて、図書館を後にしました。
色彩の建築
内部と外部で一貫して、多彩な色が使われていました。それほど複雑な内部空間でも無かったので、動線上の目印というよりは、建物の印象付けみたいなものなのかな。
あまり日本では色彩を全面に使うものが少ないので、個人的には面白かったし、構成や造形は単純ながら異質感を感じました。内藤廣さんは、丁寧な動線と美しい小屋組や構造を魅せるような、わりとシンプルで気の利いたものを作るイメージだったので意外でした。
落ち着いた雰囲気の3階部分に快活なイエローは少し場違いな感じがした。
商店街から駅に繋がる通路に配置されたパラソルのような鉄骨。先にいくにしたがってH綱が細くなっていく。写真だと支柱が邪魔そうな感じがするが、実際に見た感想としては、意外と邪魔じゃないし、屋根の圧迫感も無い。吹きさらしの雨だと濡れてしまいそうだが、開放的な軒下空間だった。
ようやく内藤廣さん得意の美しい構造を見せる部分を垣間見れた。
徳山駅前図書館の内部空間
線路の軸線にそった細長い建築のため、直線方向に抜けた内部空間。
店舗デザインはお馴染みの蔦屋書店そのものでした。照明を落とし落ち着いた空間を作る。照明の位置をヒューマンレベルに下げて、本や什器に目が行くように仕向ける。
天井の木材が美しくて見惚れました。木の組み方を変えて、空調の通気口になっている場所もある。
本棚で視線が抜けたり、抜けなかったりと落ち着いた雰囲気で居心地は良い。
他の蔦屋書店に比べて、少し明るめなのが印象的でした。テラス付近は開口部が多いので明るくなりますが、中の方は落ち着いた感じでグラデーションが感じられる。
テラス寄りの場所が閲覧スペースになっていて、明るい場所で本が読める。ちょっと疲れたら街を眺められるような、そんな場所。
1階と2階を繋ぐエスカレーターがあり、おそらく壁面の図書アートを見せる目的なのだろうが、1階と2階の動線がちょっとわざとらしいなと感じた。
図書館はwifi完備、交流室など盛り沢山で利用者目線ではめっちゃ良い
図書館3階のかなり広いスペースが自習・閲覧スペースになっているので、学生や勉強する人にとってはとても良い場所でした。
wifi・コンセントが完備されているため、調べ物をしたり、本を読みながら1日を過ごせるような所です。
交流室が3つあるので、打ち合わせやミーティングができる!これが贅沢!研究会とか発表会とか出来そうで羨ましい。
がっつり勉強したり、待ち合わせのちょっとした時間を潰せたり、ふらっと寄って立ち読みできるような良い施設でした。
徳山駅西駐車場利用で、1時間まで駐車料金が無料なのも嬉しい。
近くにあったらずっと行ってるだろうなと思える施設でした。本好きには最高の施設だし、カフェや店舗があることで気軽に図書館へ人を呼び込める。
そもそも必然的に人が往来する駅という場所に図書館ができるのは住む人・利用客にとっては非常にありがたい。しかも図書館の営業時間が22時まで開いてるので帰宅時にも立ち寄りやすい。
蔦屋書店のチェーン的蔓延には少し辟易してしまう部分もあるが、図書館が有用な装置として使われるのは市民目線でも行政目線でもwin-winだと思う。チェーン的流行りが廃れていった後にある種のノスタルジーが生み出される気がするので、蔦屋書店と行政とのコラボがどうなっていくか注視しておきたい。