豊島への行き方
岡山の宇野港から豊島へ
西日本建築を巡る旅で手始めに行ったのが、香川県の豊島(てしま)です。豊島は瀬戸内海にある小さな島ですが、アートで有名な直島と同様に美術や建築作品の宝庫です。
島に行くことがすでに非日常的で面白いのに、さらにアートと建築を巡れるなんて最高です。
岡山側から豊島に行くには、宇野港からフェリーで行くのが主なルートです。宇野港は岡山市内から車で30分ほどです。宇野駅の隣に一日500円のリパーク宇野駅前駐車場があり、安く停められるのでおすすめです。
宇野駅から宇野港までは200mぐらいの距離なので少し歩きます。
一日停める場合は、豊島行きフェリー乗り場近くの駐車場より、宇野駅前の駐車場の方が格安です。
岡山駅から電車で宇野港まで行くことも出来ます。電車の本数が少ないので、時刻表の確認はしておきましょう。
豊島はレンタサイクルが充実してて便利
宇野港からのルートですが、宇野港から家浦港へのルートが観光しやすいです。家浦港でレンタサイクルして、観光を始めるのが何かと便利です。
家浦港周辺にはレンタサイクルの充実に加え、喫茶店や観光場所が比較的多いので、港に戻ってきてからフェリーを待つ時間を潰しやすいからです。
僕は唐櫃港の方が豊島美術館に近いと思って、宇野港から唐櫃港に入港しましたが、唐櫃港は本当に何も無い所で、時間を潰すには大変そうでした。
また唐櫃港からレンタサイクルして、豊島美術館に向かいましたが、先に家浦港で降りてレンタサイクルして来た人たちと同時くらいに着いたので、料金も安い家浦港にすれば良かったと後悔しました。
なので特段の事情が無く、豊島を初めて観光する場合は家浦港から観光を始めるのがおすすめです。家浦港からレンタサイクルすれば、豊島美術館はそんなに遠く無いです。島は車も少ないので、自転車が気持ち良いです。
レンタサイクルは電動自転車が主で、1日1500円でした。電動自転車めちゃくちゃ良いです。島は坂が多かったんですが、グイグイ進むので本当に快適でした。
ロードバイクを持っている人は、ぜひ輪行して豊島をポタリングしてみて下さい。車も少なく、景色が最高で、豊島は自転車で走ると本当に気持ち良いです。
西沢立衛氏設計の豊島美術館へ
- 所 在 香川県小豆群土庄町
- 竣 工 2010年
- 用 途 美術館
- 延 床 2,334.73㎡
- 構 造 鉄筋コンクリート造
- 設 計 西沢立衛建築設計事務所
- 施 工 鹿島建設
鹿島建設のHPに施工時の詳しいレポートがあります。
シークエンスの化け物 豊島美術館
シークエンスとは、建築の中でよく使う用語で、移動する中で変わっていく景色や空間のことです。
豊島美術館は、まずエントランスに行くまでに長いシークエンスが用意されています。
丘のような森を一周ぐるりと回ってようやくエントランスに辿り着きます。
丘を一周する中で、少し閉じた森を通り抜け、海を一望できる開けた場所へ。そこからまた木々でおおらかに閉じられた空間を進むとエントランスへ。
あとから豊島美術館を自分の中で理解するために、この動線が非常に重要でした。
エントランスの前で、靴を脱いで、いざ内部へ。
内部空間には、ただただ感動しました。その空間の広がり、おおらかさ、光の入り方。自分のボキャブラリーでは表現しきれない凄さでした。
少し動けば景色や光が大きく変化していく。歩くたびに変化・発見が生まれる。
さらには立ち止まっていてさえも光の変化・音の変化があるので、立ち止まっているにも関わらず風景がどんどん変わっていく。シークエンスがどんどん変化していくんです。水や虫のうごめき、人々の動きや声さえも包み込み、意識させ美しく感じられる。
僕の個人的感想としては、豊島そのものを感じさせる建築だと感じました。
「感じさせる」というのが重要で、有無を言わさず感覚的になります。
外からの鳥や木々のかすれる音、水の音、ほんの少しの音が鋭敏に入ってきます。開口部から空や木々へ向かう視線が、自ずと作られ、人は自然と開口の回りに集まります。
つまり目、耳、匂い、温度などの感覚を鋭敏化し、感覚が島そのものへ向けさせられる。なので、この建築は島そのもの、島を凝縮したものなのだという結論に達しました。
建築自体はランドスケープのような丘のようでおおらかな存在ですが、動線や、視線の誘導、感覚の鋭敏化など、非常に作為的に設計された建築だと理解しました。
美術館から出て、島の海や空を眺めていると美術館内部で感じた、おおらかに包まれているような感覚を感じました。時間を置いて、もう一度美術館を訪れたのですが、豊島のおおらかな雰囲気と広い空に包み込まれているような安らかさが空間体験としてありありと感じられました。
まさに豊島で感じる空の優しさが、美術館の空間で包み込まれているような感覚と同一なんです。
美術館内部の高さが絶妙で、内部の空間に対して天井高がちょうど良い。あれ以上高いと空間がもっと広がって、空間の親密さが薄くなり、あれ以上低くなると圧迫感があり、包み込まれるような感覚は生まれなかったんじゃないかと思う。
美術館の最高高さは約4.5mほど、西沢さんはどのようなスタディを通じて、この広さと高さを導き出したのか。
美術館へ繋がる長いシークエンスで、島の魅力である海や木々の自然を感じさせ、そこから島を凝縮させたような内部空間へ入る。島を感じさせながら段々と濃密な空間へと誘う一連の流れが設計されたものでした。
内部空間は撮影禁止なので、写真は撮れないですが、これはもう資料や写真からは計り知れない空間体験です。ぜひ足を運んでみてください。
豊島横尾館
- 所 在 香川県小豆群土庄町
- 竣 工 2012年
- 用 途 美術館
- 延 床 179.65㎡
- 構 造 木造、一部RC造(リノベーション)
- 設 計 永山祐子建築設計
- 施 工 ナイカイアーキット
ここは色彩の建築とでもいうべきか、赤色がヒエラルキーとして使われる。普段の景色が色彩にとって変わられることで、風景が一変するし、気持ちや感覚を揺さぶられる。
横尾忠則さんの絵にも色彩の照明やガラスが反映される。美術作品と建築が渾然一体となるようなアイデア。
母屋のガラス張りの内部を支える柱の位置が気になる。開口部すべてガラスにしちゃうか、支柱は真ん中に配置すべきか。それとも中心から離れたアヴァンギャルドの表明なのか。このガラス張り部分を支える柱の位置が気になった。
ガラスや鏡の使い方が多彩で丁寧なので、ひとつひとつの空間に気づきや、驚きがある。
色彩のガラスが内部の作品に干渉しないよう強い照明が当てられる。
いかにしてアイデアをやり遂げるか、強い意志を感じる。
横尾さんの館なので、可能だった面も多分にあると思われるが、試みとしておもしろい。
豊島八百万ラボ
- 所 在 香川県小豆群土庄町
- 竣 工 2016年
- 用 途 美術館
- 延 床 約70㎡
- 構 造 木造、一部鉄骨造(リノベーション)
- 設 計 成瀬・猪熊建築設計事務所
- 施 工 岸本建設
古い住家っぽい建物のリノベであるが、内部が鉄骨の梁によって斜めに分節される。鉄骨で補強がなされているが、馴染む色彩と気にならない高さに配置。
ハイサイドライトがさりげなく周囲に巡らされ、暗すぎないがラボ感を醸し出す暗さ。木造で古いながら、全体的に軽やかさのある建築でした。
ラボの作品はスプツニコさん。非常にユニークで、笑いを禁じ得なかったです。なんというか癖になる感じの映像作品でした。
夜になってもあれはなんだったんだとなり、相当癖が強いです。頭の片隅に残り続ける不思議なインスタレーションでした。
ここはトイレの内壁は色彩が綺麗でした。インスタレーションが本当に癖になる面白さなので、建築だけでなく、作品もぜひ行って見てください。ほんとに癖になります。
建築とアートを満喫できる豊島
ここまで豊島の建築を中心に書いてきましたが、建築やアートだけでなく、ご飯やカフェも美味しくて旅行先としても間違い無いです!
豊島は非日常感を存分に感じられて、非常に良い旅になりました。瀬戸内芸術は直島だけでなく、豊島も素晴らしく、存分に満喫できます。直島だけでなく、ぜひ豊島も感じてみてください。
特に豊島美術館は個人的に今まで見たアートの中でも、トップ3に入るレベルで素晴らしかったです。